私のボトックス治療方針

ボトックスは、強力な治療薬です。けいれんを止める、という利点が強調されますが、顔つきが変わる、表情が損なわれる、皮下出血するという不利な面については、現在の医療界では、あまり言及されていません。 効果を高く、そして副作用を少なくすると、治療を受ける方は社会の中で、家庭で、安心して楽しく笑顔を輝かせて毎日を過ごすことができます。 大切なお金と時間を費やして、遠方から来院される皆さまに、「来て良かった。また次もお願いしますね。」と、毎回言っていただけるように、蓄積した技術を込めて治療いたします。

藤江眼科医院で、井上眼科で、これまで治療してきましたが、眼瞼けいれん、片側顔面けいれんの方にボトックスを注射するとき、私が大切にしている治療哲学があります。
ボトックスは、けいれんを止める特効薬です。しかし、医師の仕事は、けいれんを止めることで完了するものではない、と私は考えています。通常、3ヶ月間隔で注射を受ける方々が大部分ですが、同じ顔をした人物が二人といないように、ひとりの方を追跡して拝見していると、診察のたびに、けいれんの程度に差があることに気づきます。また、前回注射した部位をすべて点検すると、現在ちょうど良い部位、今回は不足と考えられる部位、まだ前回の薬の効果が残っている部位が分かります。前回どおりの注射をして治療終了ではなく、あくまでも細かいところまで十分に拝見して、また治療を受ける方々のご意見お考え、感触をお伺いしたのちに、注射直前の状態、個人の状況、ご都合に合わせて、私は医師として常に治療を微調整します。注射するそれぞれの部位で、これが一番良い、と考えるぎりぎりのところまで、これまでに蓄積した技術と心を込めて、治療いたします。
私はこう考えます。1年中いつも同じ状態の病気なんて、有り得ない。数年後に皮膚や筋肉が老化しない人間なんて、存在しない。毎回毎回、その都度、注射前評価を行うことなく、また数年後の状態を心配することなく、同じ部位に同じ量の注射を続ける、というのは有り得ない。注射をする直前に必ず診察をして、小さな変化に気づき、さらにより良い治療をご提供できないか、毎回考え、ご提案をして微調整します。微調整したあとは、必ず治療を受けた方のお考えをお伺いして確認し、次の治療に反映します。
30年後のボトックス治療を想像して常に向上を目指す。医学は日進月歩と言われますが、自分の専門分野について歴史を振り返ってみると、10年に1度、大きな変革が訪れます。そして、30年経過すると、過去の常識が現在の非常識に、過去の非常識が現在の常識に変わっています。30年後の治療はどうなっているだろう、と考え、常に現状に満足することなく、より上質な、効果の高い、負担の少ない治療を探し求めて検証します。

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