副作用を 出さない

ボトックス注射で不愉快な副作用を出さないこと。  これがきわめて重要な点です。

ボトックス注射を申し込まれるときに、承諾書を書いていただきます。書類の控えをお渡ししてお持ち帰りいただきますが、そこに副作用についての記載があります。

眼瞼下垂、兎眼、まぶたの閉瞼不全、流涙、複視、局所性顔面筋力低下、顔面麻痺などが代表的なものとして、書かれています。

これらの副作用のほとんどは、薬の作用が予想以上に強く現れた結果と考えられるもので、薬の効果が弱まるとともに回復しています。と記載されています。

私は、因果関係を常に考えるのですが、不愉快な副作用は、医師が注射したために出た結果であり、その原因は、医師の注射手技にあります。副作用が出ましたが、あらかじめ説明済みで承諾書をいただいています、と言うものではありません。注射する前に、詳しく診察して、この方には通常の注射をするのは危ない、と判断できれば、あるいは、一度副作用を生じた方には、同じやり方を繰り返してはいけない、と考慮できれば、避けることができます。

眼瞼下垂

年齢は、きわめて大切です。若い方は筋肉が豊富にありますが、高齢者では、ボトックスの麻痺作用が強く現れます。同じ方であっても、年齢が上がってくると、注射手技を変更して、眼瞼下垂を予防しなければなりません

まぶたの閉瞼不全

まぶたが過剰に強く収縮する力を減少させるために、ボトックスを注射する訳ですが、麻痺作用が期待値よりも強く出ると、閉じる力が弱くなります。自宅で髪を洗うときに、洗剤が目にしみます。ただし、注射から2週後がもっとも効果が出る時期で、この時期にある程度強く作用が現れないと、3ヶ月間、効果を継続することが困難となります。ここは、十分に時間をかけてコンサルティングすべき事項です。

流涙

下まぶたの鼻寄りにボトックスが過剰に入ると、下まぶたの筋肉によるポンプ作用が減弱して、目から鼻への涙の流れが減少し、涙が貯留する、こぼれる、という副作用が出現します。

局所性筋力低下

当たり前の話ですが、ボトックスは、筋力を低下させる薬剤です。不愉快な顔面筋肉の勝手な収縮を弱めることにより、生活が楽になるのですが、日常生活では、顔面の筋肉を動かすことにより、表情を出します。これも、ボトックスにより減弱します。このふたつを可能なかぎり両立させることが、医師の腕前です。

複視

通常は起こらないのですが、下まぶたに注射したボトックスが、さらに深く浸透していって、眼球を動かす筋肉に麻痺を生じることがあります。物体や文字がふたつに見え、きわめて不愉快な副作用です。経験症例が増えると、初診のときに、この方には通常の注射は避けたほうがよいな、と分かります。また、一度複視を起こした方に、二度起こしてはいけません。

皮下出血

この承諾書は、グラクソスミスクライン社が作成しているからでしょうか。皮下出血については、副作用に記載されていません。皮下出血は、薬剤による副作用ではありません。注射手技による副作用です。注射する前にはきれいなまぶたが、注射後、赤青く変色して数日から1週間元に戻らない。きわめて不愉快です。因果関係は、明らかに注射が原因です。

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