ボトックスを注射するなら、期待される効果を確実に出すこと。
ボトックスを注射されたが、期待したほどの効果がない、という声を聞くことがあります。ボトックスは、強力な薬剤ですので、効果が出ないということはまずありません。これは、おそらく有効にボトックスが注射されていない、つまり効果を発揮すべきボトックスが、実際には効果が不足した状態で投与されている、ということでしょう。万人に有効な基本形というものはありません。基本形となる注射手技だけでは、効果に限界があります。この基本形だけで施療していると、「効くひとには効きます。効かないひとには効きません。」となります。
まず真っ先に、医師は顔面の解剖学を熟知していなければなりません。さらに、筋肉は個人差が大きいので、毎回、顔面に触れて、顔面を動かしていただき、皮膚の下に存在する筋肉を同定する必要があります。ボトックス注射が効かない、とは、収縮を弱めるべき筋肉にボトックスが届いていないということです。どの筋肉のどの部位にボトックスを入れるか、はきわめて難しい手技です。臨床経験を積み重ねていくうちに、次第に理解が深くなります。これが、初心者と熟練者では、大きな差が出るところです。また、施療回数が多くても、いつも基本形で処理しているのでは、上達がありません。
効果を発揮するだけの量を投与するのですが、当たり前の話ですが、副作用は絶対に避けなければなりません。副作用は、医師が注射したことによって起きるものです。責任は医師にあります。副作用は出さない。その手前の量で、どの部位に入れたならば、生活に支障を生じている不愉快な痙攣を抑えることができるか。これこそが、熟練者の腕の見せどころです。