ボトックス(ボツリヌス毒素)について解説します
ボツリヌスと聞いて、食中毒を起こす細菌と記憶していらっしゃる方は多いことでしょう。古くは、からしレンコンによる食中毒が有名です。最近では、蜂蜜を摂取した乳児が乳児ボツリヌス症を発病して、厚生労働省・消費者庁からあらためて注意喚起がなされました。
酸素が存在しない環境で増殖する嫌気性菌であり、自家製の瓶詰めや加工保存食の中で増殖して、毒素を産生します。この毒素が体内に入る、あるいは体内で増殖すると、嘔吐、視力障害、嚥下障害などの神経症状を起こします。
薬理学的にボツリヌス毒素は、筋肉を動かす神経と筋肉の接合部に存在するシナプス前終末からのアセチルコリンの放出を阻害することにより、筋肉の麻痺を起こします。また、細菌学的には、A型からG型に細かく分類されます。最強の自然界毒素と言われます。
ボトックスの有効成分は、ボツリヌス菌が産生するA型ボツリヌス毒素であり、塩化ナトリウム、人血清アルブミンを添加しています。他に、製造工程において、ウシ、ヒツジ、ブタ由来成分を使用しています。ごく少量のボツリヌス毒素を痙縮している筋肉に入れることにより、嫌な痙攣をする筋肉を弛緩させて、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣の症状を軽減します。
一般の方を対象とした説明書が製薬会社からネットで発行されています。「患者向医薬品ガイド ボトックス注用50 グラクソスミスクライン」でネット検索すると、説明書をPDFファイルで読むことができます。
また、診療機関でボトックス注射を希望されると、「眼瞼痙攣・片側顔面痙攣・斜視 患者の皆様へ」という題名の「ボトックスによる治療に対する同意書」(眼科医療機関においてはこの書面になります。)に署名していただいてから、施療を予約します。この用紙は、控えとしてお持ち帰りいただきますので、ここにもボトックスの説明が簡略に記載されています。ご自宅でゆっくり確認していただき、疑問があれば電話でお問い合わせください。